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2008年7月 9日 (水)

Open Building

質問を受けたので、オープン・ビルディング理論について。

1964年にオランダのSAR(Stiching Architecten Research)によってOpen Buildingh 理論は提唱された。 集合住宅における住み手参加による設計方法として日本でもおなじみか。

以下はこの設計方法における3つの概念。

・Tissue

・Spports

・Infill

おおまかには、Tissueは都市・街並・住棟など、Spportsは建築躯体・設備など、Infillは住戸内の設備・内装・建具など、を意味している。

ここには、住宅には変化することなく古くなってしまう部分と、住み手の変化(年齢・家族構成・ライフスタイルなど)によって更新されるプランや内装・設備の部分があり、これらの不整合によって建築に「もつれ」が生じる、そのことへの着眼が基礎にある。

すなわち、変化しない「サポート」と変化する「インフィル」に分け、建築をつくる側とつかう側の意志決定レベルと物理的レベルを分離可能な状態として設計し、これを再び結合する形で建築をつくること。 このことが、住み手の多様な生活とライフサイクルに対応した「住み手の希望を取り入れた変化しないサポート部分に支えられた住宅」となり、建築を長期間使用し建替を最小限に抑え、都市景観の保全にも繋がっていくということだ。

少し留意しておきたいのは、サポートを構造躯体、インフィルを間仕切、と単純に理解するのは誤り。 この理解には、建築が使用される形態の経年変化に対する洞察やサポート・インフィルの生産・施工計画に対する配慮が不足しているからだ。

短期間に大量の住宅建設が必要な時代には一括請負形式の工事発注が効果的であった。しかし、低成長と環境対策が必要な時代においては、総合建設業(ゼネコン)に代わってサポート業とインフィル業の産業化が、それぞれの地域の独自性を生かす形で進むことが望ましい。この見識こそ重要。

これに類似した建設生産システムは、近世の日本の社会で行われてきた。が、近代以降の経済状況の中で瓦解してしまった。 Open Building提唱者の1人、John Habrakenは日本の書院造を源流とする木造軸組構法をヒントとしてRC住宅に応用したともいわれている。

意匠系の論文にあるような、空間スケールのパターンとして引用されるものでは決してないのである。

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